写真にある物は、50年ほど前に使っていたクライミングアンカーである
今はこんなに短くて、くさび形のクライミングアンカーは使わない
メルカリにペツルのクールボルトが安く出品されていた
購入した (450円/2本)
このボルトを私の昔のクライミングアンカーのハンガーと組み合わせて使おうかと思っている
このクライミングアンカーは、コンクリートなどに打ち込む工事用のオールアンカーと同じ、くさび形の形状の物を使用していた
くさびの先端が岩に空けた穴の底に届き、頭をハンマーで強く叩き込むことにより、くさびがシャフトの先端を広げて行き、穴の中の壁にガッチリと固定される物であった
ただ、設置は結構難しい
穴が浅過ぎると、叩けど叩けどシャフトは奥に入らず、ハンガーはガタつく
穴が深過ぎると、くさびが効かず、シャフト自体が不安になるくらい動く
経験して覚えないと適正な穴の深さは分からない
コンクリートと違って、岩の硬さや柔らかさによっても穴の深さは変わる
砂岩は浅め、花崗岩は深めとなる
現在のクライミングボルトはこのくさび形の方式とは違い、ボルトの先端は先が太いテーパーになっている(写真では右斜め下)
これにハンガーを通し、ナットが着いた頭(写真では左斜め上)をハンマーで叩いて穴の中に完全に入れる
(ハンガーを先に入れてナットも入れておかないとネジを切った頭をハンマーで叩いてしまうので後からではナットが入らなくなる)
十分に入ったらナットをスパナなどの工具を使って(本当に)強く締めていく
するとボルトは壁の外に出てきて、ナットの締めつけに併せて岩の中のボルト先端のテーパーも壁の外側方向へ引きずられる様に移動する
すると、スリットが入ったリング状の部材(右下半分ほどからの部材)は穴の中でテーパーの移動でスリットが割れて内側から外へ膨らんでいく
結果、このリング状の物が膨らんで固くなり、穴の中の壁に固定される
ナットで締め付けられたハンガーは壁にピタッと張り付くように固定される仕組みになっている
ナットで固定される前にハンガーの方向を調整する必要がある(一旦締めたナットは緩めたくない)
上手く出来ればこのアンカーはとても安定している
昔の私が持っているクライミングアンカーも今のボルトもそうだが、打ち込んだら抜けない
失敗しても抜けない
昔のアンカーは鋼材であったが、今はボルトもナットもハンガーもステンレス材に変わっている
昔はクライミング専用のタガネを使ってコツコツと叩いて穴を空けていたが、今はバッテリー式のハンマードリルを使う
叩いて空けようが、ドリルで空けようが、穴の深さは昔も今も適正にしなければならない
昔のくさび形のアンカーは穴の底に当たっていなければならないが、今のアンカーボルトは穴の底から浮いていなければならない
いづれの場合も、穴の中に削れた粉を残さないようにブロワーやブラシを使ってキレイにしなければならない
特に今のボルト形式のアンカーは岩の粉が残った状態でセットすると、この粉が原因でスリットが入った部材が穴の中で滑ってしまって膨らまず、ナットは締めらず、シャフトは空回りをしてしまうことがある
こうなると始末が悪く、アンカーとしては勿論使えないし、アンカーボルトは抜けない
ボルトをカットして残ったシャフトは叩いて奥に沈め、岩壁は埋めるしかない
命がかかっているアンカーボルトの設置は、穴空けとその後の穴の中の掃除はとても重要で、慎重且つ丁寧な作業が求められる
P.S.
クライミングボルト以外にもクライミングアンカーは色々と持っている
ネジ状の物は細いのも太いのもアイスクライミング用の物で、他はハーケンと呼ばれる物である
左下の筒状の長い物は、私が使っていた物ではなく、エベレストを中国側から攻めた岳友から貰ったアイススクリューである
正確には、ドイツSALEWA社製の「スクリューアイスハーケン」と呼ぶべき製品である
ハーケンと呼ぶのは叩いて入れるからで、抜く時には回して抜く方式のアイススクリューである
50年代のこのアイススクリュー方式はもう使われてなく、今は最初からねじ込むタイプのアイススクリューとなっている
真ん中の黒い薄刃のハーケン(門田の101)は谷川岳の壁で使った物だと思う
谷川岳で使うハーケンには、もっと小さく薄い物もあったと知ってはいるが、私は使ったことはない
ラープと呼ばれていたごく小さなアンカーとは言えないものであった
滑落衝撃にはとても耐えられる様な物ではなく、人工登攀用に使ったものと思う
谷川岳の滝沢第三スラブで使ったと聞く
カムやナッツの使用経験は私にはないが、工業用ナットの六角部を斜めに削ってテーパーを作り、ナットの穴に細いスリングを通し、ナッツまがいの物を自作したことはある
中のネジ山も丸ヤスリで角が出ないように削った
このナッツを初めて目にした時、上手いものを考えたものだと私はとても感心したことを覚えている
ナッツの語源はナットにある
当時のハーケンは軟鉄の物が多かったが、私の現役最後の頃のハーケンは、軽いチタン(TOKYO TOP No2)とか、ジュラルミン製(STUBAI AUSTRIA)の物を数枚、左脇に吊り下げて登っていた
こんな話は岳友しか知らないし通じないが、そんな岳友の多くは先に逝ってしまった