2021年1月24日日曜日

古い登山靴

左から欧州山荘(菅野)、Galibier、Eigerダブル、Nordica
 最近、愛犬matthewとの散歩は、雪があるということもあるが、倉庫から引っ張りだしてオイルを塗ったNordicaの登山靴を履いて歩いている

倉庫には、他の登山靴も保管してある

今日、その登山靴を倉庫から出してみた

岩登りに使っていたGalibierと冬山で使っていたEigerのダブルはすぐに見つかり出てきた

そのほかにあまり記憶にない登山靴も出てきた

靴の中のタン(舌革)に欧州山荘のラベルが縫い付けられていた

他には、家内の古い登山靴もあった

これらの登山靴は、習志野から当地に引っ越してきた倉庫の中の段ボールの中に仕舞われっぱなしで、12年ぶりに外に出てきた

いずれもきれいな状態であった

初期のクライミングシューズもあるはずだが、それは見つからなかった

Eigerのダブルは全盛期の冬山で活躍したフランス製のインナーシューズとアウターシューズの二重構造の登山靴である

私の冬山は、19歳の八ヶ岳正月合宿に始まる

テントはビニロン製の二重のかまぼこ型で、フレームは竹であった

凍ってしまい、撤収時には、背負子がなければ下せなかった

この頃、登山靴は何を履いていたのかは記憶にないが、登山靴の上からオーバーシューズを履いて、深雪のラッセル時には、オーバーシューズを履いた状態でワカンを付け、凍ったところでは、門田の10本爪アイゼンを付けた

しかし、私のオーバーシューズを履いた経験はこの合宿時だけで終わった

その後すぐにこのEigerのダブルを履いたわけではないので、このEigerダブルはいつ頃から使っていた登山靴かの記憶はない

この靴だけ、他の登山靴と違い、靴底のビブラムはビス留めも、釘打ちもなかった

現物を見て、記憶が戻ってきた登山靴がこの欧州山荘の登山靴である

欧州山荘といえば、四ッ谷にあったアイガー北壁登頂者の大倉大八さんの登山用具店である

この登山靴は出来合いの物ではなく、私の足に合わせて作ってもらったものであると思う

菅野モデルといわれる登山靴ではないかと思われる

山スキーを始めるにあたり作った靴のように思われる

踵部分にケーブルビンディングがはまるような加工がされている

踵のケーブルビンディング部に上から打たれている釘は、竹ではないかと思う

日本人の職人らしい発想である

山スキーには夢中になることがなかったので、この登山靴は(スキーには)あまり使用されていないかもしれない

25歳ころに購入したのが、このフランス製のGalibierである

穂高や劔などの岩登り専用として履いていた靴であった

とにかく底が曲がらない、踵は浮かない靴で、当時の岩登りのスタイルとしては最適な靴であった

Galibierを履く前までは、お茶の水の山道具屋のさかいやで購入したショートカットのクレッターシューズを履いていた

仙台にいた頃もこのクレッターシューズを愛用しており、岩登りのトレーニング場としての鎌倉岳でも使っていたし、黒伏山南壁の登攀にも使っていた

このクレッターシューズは軽く使いやすいのだが、ショートカットなので、足首の固定は緩くなる

足首の固定が緩いのは、良い場合もあるが悪い場合もある

黒伏山南壁の上部ように瓦を下向きに積み重ねたような岩場とか、谷川のようなスラブの多い岩場では有効に働くが、切り立った岩場では、足首が不安定だと滑り落ちるような気になる

先にGalibierの購入時期を25歳ころと言い切れたのは、滝谷合宿に向けて購入した記憶が強くあるからだ

滝谷のように切り立った鋭い岩が続く岩登りでは、底は固く、踵は浮かず、足首は固定されるこのGalibierが適していた

当時の登攀スタイルでは、小さな岩角でもそこに靴先を乗せて立つといった感覚で登っていた

Galibierだけ、ビブラム底ではなく、Galibier MAKARUという靴底が貼られている

この靴底の特徴は他のビブラムと違い先端部に溝が切られていない

Galibierは登攀用に作られた靴なので、当時の登攀スタイルでは、最もこの靴先の出来が大切となってくる

この靴先で、岩をとらえて、立つからである

この靴先が減ると困る

私のGalibierの靴底は、純正品のソールに貼り替えられていた

擦り減った靴先が気になったのであろう(私が注文をして貼り替えたのは間違いないと思うが、私がいつ貼り替えたのかの記憶はない)

当時、Galibierは優れた登攀用の靴であったが、流行でもあった

私は、わざわざヘルメットまでGalibierに買い替えた

昔の岩登りのスタンスの取り方は、今のフリークライミングとは全く逆の考え方であった

岩にへばりつかず、腰を伸ばしてスッと岩に立つことが求められた

世界長 パンサー
しかし、当時から革新的な考えを持つ方(クライマー)はいた

鷹取山などでのトレーニング場において、靴底がビーチサンダルのようなスポンジで出来ている(多分)月星とか世界長とかの安いランニングシューズを履いて登っていた

(私の記憶によれば、月星のジャガーとか世界長のパンサーといったランニングシューズだったと思う。色は白であった)

私には、(岩を登るには)これもありかなと思えた

踵が浮かないように、靴の上から踵部分を紐で縛って使っている方もいて、私も真似をしてこの靴も履いて岩登りに使ってみた

踵が靴から外れて脱げないよう、踵は草鞋の踵をしめるように紐で縛っておく必要があった

私は包帯を使って縛っていたような気がする

スポンジのソールは湿った岩にも有効であつた

しかし、スポンジの靴底は岩に擦れて、特に親指の付け根あたりはボロボロになった記憶がある

このランニングシューズでは、つま先立ちはできない

靴の中の指の裏全体を使って岩に押し付けるようにしてスタンスはとる感じであった

今日、Galibierを履いて庭の切り株の縁に立ってみた

立った感じは、このGalibierの靴の中でも足の指は曲げて力を入れていることに気づいた

スポンジソールの安いランニングシューズでもそうで、岩に立つとき、安い運動靴の中の指はこれも同じで強く曲げていたと思う

それがとは言えないかもしれないが、オリンピックの競技種目ともなった今のフリークライミングで使用している足よりも小さなクライミングシューズはこの原理のもとに発展をして行ったものと思う

最初から指を曲げて履くクライミングシューズは、この足指の力を得る目的があるかだと気付いた

事実かどうか定かではないが、このクライミングシューズのソールには、F1などのレーシングタイヤのゴムが使われていると言われていた

柔らかかった記憶がある

私も、35年前のヨーロッパアルプスへ向かう前、三つ峠で岩登りのトレーニングをしていたが、その際に足よりも小さなこのクライミングシューズを購入し使った

確かにスタンスは安定したが、この小さな靴の痛みに私は堪え切れず、使いこなせないとともに、使い切れなかった

前述の通り、このクライミングシューズも新品に近い状態で、引っ越し荷物の中に眠っていると思うが今回は見つけ出せなかった

Nordicaは先のブログに記した通り、私の長い登山歴の中において、最もオールマイティに最も履きやすいこれもフランス製の登山靴である

しかし、Nordicaは今も履きやすい靴なのだろうかと考える

今もではなく、以前から履きやすい登山靴であったのだろうかとも考えた

4年前、エベレスト街道を歩いた靴はメレルのカメレオン6だし、そして41年前に家内とアンナプルナの裾を回り、ジョムソン街道を歩いた時は、ニューバランスのジョギングシューズで歩いた

要するに運動靴で歩いてきたわけである

現代においては、縦走などの山歩きでは多分、今の1万円チョットで購入可能なトレッキングシューズの方が、性能、機能ともにNordicaよりも履きやすいであろう

軽いし、柔らかいし、中はゴアテックスを使っている

そして、昔々も多分、あの青い色をした安っぽい土踏まずに金具の爪が付いたキャラバンシューズといわれた靴の方が履きやすかったのではないかと思えるのである

今となって考えると、キャラバンシューズを履いて歩いた方が、北アルプス全山を走り抜いた一週間はもっと楽にそして更に早く歩けたのではないかと思えるのである

目的達成の手段は、固定観念にも周りの雰囲気にも流行にもとらわれてはならない

このことは、前述のランニングシューズを使った登攀からも言えることで、重たい革の登山靴で岩を登っている多くの人の驚きを尻目に、先駆者は画期的な方法で岩を登って見せた

足指を曲げてムリムリ履くクライミングシューズの出現とそれに伴うクライミングスタイルの変革は、アルプスから始まった長い登攀の歴史を塗り替えたといってもよいだろう

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